【2026年7月公表】金融庁NISA利用状況調査を徹底分析|口座2,820万・累計買付71兆円の裏で「3分の1は動いていない」

【2026年7月公表】金融庁NISA利用状況調査を徹底分析|口座2,820万・累計買付71兆円の裏で「3分の1は動いていない」

投稿日: 2026年08月17日

2026年7月3日、金融庁が「NISA口座の利用状況に関する調査結果(2025年12月末時点)」を公表しました。ニュースの見出しは「口座数2,800万超」「累計買付額71兆円」で止まりますが、公表資料(別紙1〜6)のExcelを開くと、見出しには出てこない数字がいくつも入っています

この記事では公表データを直接集計し、口座の稼働率、投資枠の使い方、買われている商品、年代差、都道府県差まで踏み込んで整理しました。


サマリー:この調査で押さえるべき7つの数字

指標 数値
NISA口座数(2025年12月末) 2,820万6,434口座(政府目標3,400万の83.0%)
累計買付額(2014年〜2025年) 71兆3,847億円(政府目標56兆円の127%)
2025年の年間新規買付額 18兆7,487億円
NISA残高(現行制度、時価) 36兆7,758億円
2025年に一度も買付がなかった口座 1,044万6,488口座(全体の36.6%)
年間で枠をほぼ使い切った口座(300万円超) 163万8,944口座(全体の5.7%)
その5.7%が占める買付額 年間買付額の26%以上

1. 「口座数」「買付額」「残高」の3つを分けて見る

まず全体像です。NISAを語るとき、性質の違う3つの数字が混ざりがちなので分けておきます。

指標 2024年12月末 2025年12月末 増減
口座数 2,558万6,460 2,820万6,434 +262万(+10.2%)
累計買付額 52兆6,360億円 71兆3,847億円 +18兆7,487億円
残高(時価) 16兆9,508億円 36兆7,758億円 +19兆8,250億円

累計買付額は「これまでに投じた金額の総和」で、売却しても減りません。一方の残高は「いま実際に持っている資産の時価」です。ニュースで使われる71兆円は前者なので、「現行制度のNISAで36.8兆円を保有している」と「71兆円買った」は別の話だと理解しておく必要があります。

旧制度も足すと、NISA全体の残高は以下のようになります。

  • 現行制度(成長投資枠+つみたて投資枠):36兆7,758億円
  • 旧一般NISA:9兆795億円
  • 旧つみたてNISA:7兆295億円
  • ジュニアNISA:1兆5,567億円
  • 合計:約54兆4,415億円

なお2025年の残高増加分19兆8,250億円に対し、新規買付は18兆7,487億円でした。差は約1兆円強。相場が上昇した年としては小さく見えますが、この差額には評価損益と売却の両方が混ざっているため、単純に「含み益が1兆円」とは読めません。また残高は計数を取得できなかった金融機関を除いた集計です。


2. 最大の発見:口座の36.6%は1年間まったく動いていない

今回いちばん注目したいのはここです。別紙1には「投資枠の利用状況別口座数」という表があり、2025年中に一度も買付がなかった口座数が載っています。

  • 買付額0円の口座:1,044万6,488口座(36.6%)
  • 稼働していた口座:1,811万2,437口座(63.4%)

つまりNISA口座の3分の1以上は、1年を通してまったく買付が行われていません。政府目標の「3,400万口座」は口座数のみをカウントするため、この数字は目標の達成度と実態の乖離を示しています。

年代別に見ると、その差はさらに鮮明です。

年代 買付0円の比率 稼働率
10歳代 56.0% 44.0%
20歳代 35.7% 64.3%
30歳代 29.0% 71.0%
40歳代 30.6% 69.4%
50歳代 31.7% 68.3%
60歳代 35.4% 64.6%
70歳代 50.1% 49.9%
80歳代以上 73.5% 26.5%
全年代 36.6% 63.4%

最も稼働率が高いのは30歳代(71.0%)。逆に70歳代以上は半分以上が動いていません。高齢層は資産形成期を終えて取り崩し局面に入っている人が多いと考えれば自然ですが、「口座はあるが使っていない」層が全年代で一定数いるという事実は変わりません。

※この表の分母には2025年中に取引があった廃止済み口座も含まれるため、12月末時点の口座数(2,820万6,434)とは一致しません。


3. 枠の使い方は二極化している

「NISAは枠を使い切るべき」という言説がSNSにはありますが、実態の分布を見ると印象が変わります。

NISA全体(年間360万円枠)の買付額分布

年間買付額 口座数 比率
0円 1,044万6,488 36.6%
0円超〜60万円以下 1,010万5,117 35.4%
60万円超〜120万円以下 239万1,424 8.4%
120万円超〜180万円以下 105万3,151 3.7%
180万円超〜240万円以下 202万1,609 7.1%
240万円超〜300万円以下 90万2,192 3.2%
300万円超〜360万円以下 163万8,944 5.7%

年間300万円超まで使っているのは全体の5.7%。一方で0円と60万円以下を合わせると72.0%です。「みんな枠を埋めている」というのは完全な錯覚で、大多数は月5万円以下のペースだということがデータで確認できます。

ただし、この5.7%が動かす金額は小さくありません。163万8,944口座が最低でも300万円ずつ買い付けたとすると4兆9,168億円で、わずか5.7%の口座が年間買付額の26%以上を占めている計算になります。

投資枠別に見ると使い方の違いはさらに際立ちます。

投資枠 年間0円の比率 上限近くまで使った口座
成長投資枠(年240万円) 63.5% 368万3,990口座(12.9%、200万円超)
つみたて投資枠(年120万円) 51.2% 247万7,110口座(8.7%、100万円超)

成長投資枠は6割以上の口座で1円も使われていません。それでいて金額ベースでは成長投資枠のほうが大きい(後述)ため、「使う人は上限まで使い、使わない人は全く使わない」という極端な二極化が起きています。実際、200万円超まで使った368万口座だけで最低7兆3,680億円となり、これは成長投資枠の年間買付額12兆5,138億円の約59%以上にあたります。つみたて投資枠でも、100万円超の247万口座で最低2兆4,771億円(同枠の約40%以上)です。

買付額の大半は、少数の「上限まで使う層」が動かしているというのが実態です。


4. 何が買われているのか:投資信託が67%、成長投資枠でも投信が主役

2025年の新規買付額18兆7,487億円の商品別内訳です。

商品 買付額 構成比
投資信託 12兆5,991億円 67.2%
上場株式 5兆6,441億円 30.1%
ETF 4,242億円 2.3%
REIT 813億円 0.4%

投資枠別に分解すると、さらに面白い事実が出てきます。

成長投資枠(12兆5,138億円)の内訳

商品 買付額 構成比
投資信託 6兆3,940億円 51.1%
上場株式 5兆6,441億円 45.1%
ETF 3,945億円 3.2%
REIT 813億円 0.6%

成長投資枠は「個別株の枠」と思われがちですが、実際には投資信託のほうが多い(51.1%対45.1%)。成長投資枠をインデックス投信の追加購入に充てている人がかなりいることを示しています。

さらに上場株式の中身を見ると、国内株式5兆1,602億円 対 海外株式4,838億円で、比率は91:9。個別株投資はほぼ日本株に集中しています。投資信託経由では海外資産が主流である一方、個別株は国内、という日本の個人投資家の姿がはっきり出ています。

つみたて投資枠(6兆2,349億円)の内訳

  • 投資信託:6兆2,051億円(うちインデックス投信5兆4,680億円、アクティブ投信3,236億円)
  • ETF:298億円

内訳が取得できた分だけで比較すると、インデックス投信とアクティブ投信の比率は約94:6。つみたて投資枠は事実上インデックス一色です。

なお2025年のNISA口座での受取配当金は、現行制度2,788億円、旧制度2,524億円、ジュニアNISA72億円で、合計約5,383億円が非課税で受け取られています。


5. 年代別の実像:金額が最も大きいのは60代、伸びているのは20代

年代別に「口座数」「1口座あたり年間買付額」「1口座あたり残高」を並べます。

年代 口座数 構成比 1口座あたり年間買付額 1口座あたり残高
10歳代 13万4,413 0.5% 20.8万円 20.3万円
20歳代 336万8,068 11.9% 37.6万円 65.0万円
30歳代 494万5,690 17.5% 66.5万円 129.6万円
40歳代 538万1,768 19.1% 72.6万円 144.7万円
50歳代 553万1,813 19.6% 75.0万円 149.3万円
60歳代 417万5,854 14.8% 81.4万円 162.9万円
70歳代 307万8,095 10.9% 67.0万円 130.7万円
80歳代以上 159万733 5.6% 40.9万円 80.3万円
全体 2,820万6,434 100% 66.5万円 130.4万円

口座数のボリュームゾーンは40〜50代ですが、1口座あたりの金額が最も大きいのは60歳代(年間81.4万円、残高162.9万円)。退職金や貯蓄を原資にできる層が金額を押し上げています。

2025年6月末からの半年間の伸び率で見ると、傾向はまた違います。

年代 6月末比の口座数増加率
20歳代 +7.6%
50歳代 +5.4%
60歳代 +5.0%
30歳代 +4.7%
40歳代 +4.3%
70歳代 +2.8%
80歳代以上 +1.0%
10歳代 -12.1%

新規開設の伸びは20歳代が突出しています。なおNISA口座を開設できるのは18歳以上なので、ここでの10歳代は18〜19歳のみです。半年で12.1%減っている理由は公表資料からは分かりませんが、19歳が20歳になって20歳代へ移る年齢の繰り上がりが影響している可能性があります(20歳代が同期間で最も増えていることとも整合します)。少なくとも「若年層がNISAから離れている」と読める材料は、このデータにはありません。

商品選好にも明確な年代差があります。成長投資枠の買付額に占める上場株式(個別株)の比率は以下のとおりです。

年代 上場株式 投資信託
80歳代以上 70.0% 28.7%
70歳代 52.9% 45.3%
20歳代 47.7% 48.4%
30歳代 43.9% 51.3%
40歳代 42.8% 52.2%
50歳代 41.3% 54.4%
60歳代 40.4% 56.4%

高齢層ほど個別株、現役世代ほど投資信託という傾向がはっきり出ています。80代以上は成長投資枠の7割を個別株に充てており、配当収入を目的にした使い方が考えられますが、資料に保有目的の記載はありません。20歳代だけが現役世代の中で個別株比率が高い(47.7%)のも特徴で、少額で個別株に挑戦している層が一定数いることをうかがわせます。


6. 都道府県別:東京だけで14.8%、上位8都府県で57.6%

都道府県別の口座数は合計2,819万3,996口座(一部金融機関が都道府県別に集計できなかったため別紙1の総数とは一致しません)。

順位 都道府県 口座数 全国シェア
1 東京 417万6,700 14.8%
2 神奈川 247万3,048 8.8%
3 大阪 210万8,008 7.5%
4 愛知 180万3,517 6.4%
5 埼玉 169万3,210 6.0%
6 千葉 149万4,937 5.3%
7 兵庫 133万6,099 4.7%
8 福岡 115万6,109 4.1%
45 島根 12万3,664 0.4%
46 高知 11万4,325 0.4%
47 鳥取 11万4,213 0.4%

**上位8都府県で全国の57.6%、東京・神奈川・埼玉・千葉の1都3県だけで34.9%**を占めます。東京と鳥取の差は約36.6倍です。

より興味深いのは年齢構成の地域差です。20〜30代の比率で並べると次のようになります。

若年層(20〜30代)比率が高い 60歳以上比率が高い
東京 34.8% 奈良 41.1%
沖縄 34.2% 和歌山 38.8%
愛知 31.5% 徳島 38.7%
大阪 30.5% 三重 37.6%
宮城 30.5% 秋田 37.5%

(全国平均:20〜30代29.4%、60歳以上31.3%)

沖縄は東京に並ぶ若年層比率で、しかも60歳以上比率は22.5%と全国最低です。80歳代以上の比率は2.0%(全国5.6%)。人口構成の若さがそのままNISA口座の構成に出ています。逆に奈良は60歳以上が41.1%、80歳代以上が8.6%で、全国で最も高齢層に偏った構成です。

同じ「NISA口座」でも、地域によって主な利用者層がかなり違うということです。


7. 旧つみたてNISAの残高が示す、積立の説得力

個人的にいちばん示唆的だと思ったのが、旧制度の残高推移です。旧つみたてNISAは2024年以降、新規買付ができません。それでも残高はこう動いています。

時点 旧つみたてNISA残高 旧一般NISA残高
2023年12月末 5兆2,107億円 13兆1,558億円
2024年12月末 6兆3,501億円 11兆780億円
2025年12月末 7兆295億円 9兆795億円

新規資金がまったく入らないのに、旧つみたてNISAの残高は2年間で+34.9%増えました。売却して減る要素はあっても増える要素は運用益しかありませんから、売却を差し引いてなお運用益がそれを上回ったということです。累計買付額4兆5,489億円(2023年末で確定)に対して残高7兆295億円という関係も、長期保有の効果を素直に示しています。

対照的に旧一般NISAの残高は2年で31%減少しています。こちらは非課税期間(5年)の終了に伴い課税口座へ移管されたり売却されたりする動きが進んでいるためで、制度設計の違いがそのまま数字に出た形です。

「非課税期間が無期限で、売らずに持ち続けられる」という新NISAの設計の価値が、旧制度の対比から逆に見えてきます。

なおジュニアNISAは98万5,553口座、残高1兆5,567億円。口座数は2023年末の123万8,943から2年で約20%減り、残高も2024年末の1兆5,928億円から微減しています。2024年以降は年齢を問わず払出しが可能になっているため、その影響が出ている可能性がありますが、原資料に払出額の記載はありません。


8. 政府目標との距離:金額は達成済み、口座数は微妙

改めて目標との比較です。

目標 目標値(2027年末) 2025年末実績 達成率
買付額 56兆円 71兆3,847億円 127.5%
口座数 3,400万口座 2,820万6,434口座 83.0%

買付額は2024年末の52兆6,360億円から2025年末に71兆3,847億円へ増え、2025年中に目標を2年前倒しで超過しました。問題は口座数で、残り579万口座を2年で達成するには年間約290万口座が必要。2025年の実績は262万口座で、このペースが続くと2027年末は約3,345万口座、達成率98%程度で着地する計算になります。

ただ、稼働率36.6%という数字を見た後だと、口座数の目標そのものの意味を考えたくなります。口座を1つ増やすことと、動いていない1,044万口座に動いてもらうことは、どちらも「貯蓄から投資へ」ですが政策としての難易度も効果も違います


9. このデータから個人投資家が読み取れること

① 「みんな枠を埋めている」は事実ではない 年間300万円超まで使っているのは5.7%。0円と60万円以下で72%です。SNSで見る「満額投資」は明確に少数派の行動です。ただしその5.7%が買付額の26%以上を動かしているため、金額の合計だけを見ていると「みんな大きく買っている」ように錯覚します。自分のペースが遅いと感じる必要はまったくありません。

② 成長投資枠を投資信託に使うのは主流派の選択 成長投資枠の買付額は投資信託51.1%、上場株式45.1%。個別株を選ばなくても成長投資枠を有効に使えている人が多数います。「成長投資枠だから個別株」という思い込みは不要です。

③ 続けている人の資産は静かに増えている 新規買付ができない旧つみたてNISAの残高が2年で+34.9%。これは「入金をやめても、保有を続けた資産が増えた」という実データです。積立を止めるより、持ち続けることの効果を示す数字として、私はこれをいちばん重く見ています。

④ 開設しただけでは何も起きない 3分の1以上の口座が年間買付ゼロ。もし「口座は開いたけれど放置している」なら、月1,000円でも設定を入れるところから始める価値があります。統計上、そこが最大の分かれ目になっています。


データの出典

金融庁「NISA口座の利用状況に関する調査結果(2025年12月末時点)」(2026年7月3日公表) https://www.fsa.go.jp/policy/nisa/20260703.html

本記事の数値は、同ページの以下の資料を直接集計したものです。

  • 別紙1:NISA口座の利用状況(2025年12月末時点)
  • 別紙2:NISA(一般・つみたて)・ジュニアNISA口座の利用状況調査
  • 別紙3:NISAの利用状況の推移
  • 別紙5:都道府県別のNISA口座開設状況

データ利用上の注意

  • 買付額・残高は原資料が万円単位(1万円未満四捨五入)で公表されているため、端数処理の関係で内訳と合計が一致しない場合があります。
  • 残高・受取配当金は、計数を取得できなかった一部の金融機関を除いた集計です。
  • 「投資枠の利用状況別口座数」の分母には2025年中に取引のあった廃止済み口座が含まれるため、12月末時点の口座数とは一致しません。
  • 都道府県別の合計(2,819万3,996口座)は、一部の金融機関が都道府県別に集計できなかったため別紙1の総数(2,820万6,434口座)と一致しません。
  • つみたて投資枠の投資信託は、一部金融機関で商品別の計数が取得できなかったため、総額とインデックス/アクティブの内訳が一致しません。本記事のインデックス比率は内訳が取得できた分での比率です。

※本記事は公表統計の整理と個人的な考察であり、特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。