スイスの政策金利はなぜ0%なのか?低インフレとスイスフラン高の関係をわかりやすく解説

スイスの政策金利はなぜ0%なのか?低インフレとスイスフラン高の関係をわかりやすく解説

投稿日: 2026年10月08日

日本や米国など世界各国で金利が注目されるなか、スイスの政策金利は0%となっています。

スイスといえば、世界有数の富裕国であり、金融業が発達した国として知られています。

それなのに、なぜ金利が0%なのでしょうか?

その背景には、低いインフレ率、スイスフランの強さ、そして独特の金融政策があります。

スイスの政策金利は現在0%

スイス国立銀行(SNB)は、2026年9月24日の金融政策決定会合で政策金利を0%に据え置くと発表しました。

スイスは2024年から利下げを進め、2025年6月に政策金利を0.25%から0%へ引き下げました。

現在もゼロ金利政策を維持しています。

では、なぜスイスは金利を引き上げないのでしょうか?

理由① インフレ率が非常に低い

最大の理由は、スイスの物価上昇率が非常に低いことです。

2026年9月のSNB発表によると、8月のインフレ率は前年同月比0.8%でした。

さらに、SNBは年間インフレ率を次のように予測しています。

年 予想インフレ率
2026年 0.7%
2027年 0.8%
2028年 0.8%

※2026年9月24日時点のSNB予測。政策金利が0%で推移することを前提としています。

スイス国立銀行は、インフレ率が0%以上2%未満である状態を物価安定と定義しています。

つまり、現在の物価上昇率は中央銀行が目指す範囲内にあるのです。

物価が大きく上がらなければ、金利を引き上げて景気を冷やす必要性も小さくなります。

理由② スイスフランが買われやすい

もう一つ重要なのが、スイスの通貨である「スイスフラン」の存在です。

スイスフランは、国際的な金融不安や戦争などで市場が不安定になると、投資家から買われやすい安全資産の一つです。

スイスフランが買われると、通貨の価値が上がります。

これが「スイスフラン高」です。

スイスフラン高になると、海外から輸入する商品の価格が安くなります。

例えば、100ドルの商品を輸入する場合、

  • 1ドル=0.90スイスフランなら90フラン
  • 1ドル=0.80スイスフランなら80フラン

同じ商品でも、スイスフラン高になることで安く購入できるのです。

これは国内の物価上昇を抑える要因になります。

一方、スイス企業が海外に製品を輸出する場合には、価格競争力が低下する可能性があります。

スイスフラン高は、物価を安定させる効果がある反面、輸出産業には不利に働くことがあるのです。

理由③ 金利を上げるとスイスフラン高につながる

一般的に、金利が高い通貨は投資資金を集めやすくなります。

スイスが利上げすると、スイスフラン建ての資産を保有する魅力が増し、スイスフラン高につながる可能性があります。

すると、

  1. スイスの金利が上昇する
  2. スイスフランが買われやすくなる
  3. スイスフラン高が進む
  4. 輸入品が安くなり、インフレ率が下がる
  5. 輸出企業の競争力にも影響する

という流れが考えられます。

そのため、スイス国立銀行は為替相場にも強い関心を持っています。

実際、2026年9月のSNB発表では、主要通貨との金利差が拡大するなか、スイスフランは貿易加重ベースで約3%下落したと説明されています。

SNBは必要に応じて外国為替市場に介入する方針も維持しています。

スイスは過去にマイナス金利も導入していた

実は、スイスでは政策金利が0%どころか、マイナスだった時代もあります。

マイナス金利政策は、過度なスイスフラン高を抑え、物価の安定を図るために活用されてきました。

ただし、マイナス金利には銀行の収益への影響など副作用もあります。

2026年10月8日現在、SNBは政策金利を0%に維持しており、マイナス金利への再引き下げを決定していません。

今後、スイスの政策金利はどうなる?

今後の政策金利を左右するのは、主にインフレ率、為替相場、景気の動向です。

例えば、エネルギー価格の上昇などによってインフレが強まれば、利上げを検討する要因になります。

反対に、急激なスイスフラン高によって物価が下落し、景気が悪化した場合には、金融緩和が検討される可能性もあります。

ただし、現時点で今後の利下げや利上げが決定しているわけではありません。

SNBは2026年9月時点で、現在の政策金利が物価安定と経済成長を支えるうえで適切だと判断しています。

まとめ:スイスのゼロ金利は低インフレと通貨の強さが背景にある

スイスの政策金利が0%である理由をまとめると、次の3点が挙げられます。

  • 物価が安定している:インフレ率が低いため、利上げの必要性が小さい
  • スイスフランが強い:過度な通貨高は輸入物価を押し下げ、輸出企業にも悪影響を与える
  • 経済活動を支える:低金利によって資金調達や投資を支援できる

日本では円安による輸入物価の上昇が問題になる一方、スイスではスイスフラン高による物価の下押しが警戒されることがあります。

同じ先進国でも、通貨の性質やインフレ率によって中央銀行の金融政策は大きく異なるのです。

政策金利の高低だけで経済の強さを判断するのではなく、物価・為替・景気の3つを合わせて考えることが重要です。


参考資料

※2026年10月8日時点の情報です。