スイスフランショックとは何だったのか

スイスフランショックとは何だったのか

投稿日: 2025年12月16日

スイスフランショックの概要

2015年1月15日、スイス国立銀行(SNB)が為替政策を突然変更したことで、 スイスフラン(CHF)が短時間で歴史的な急騰を起こし、世界の金融市場が混乱した。 この出来事はスイスフランショックと呼ばれている。


事件の背景:なぜ「異常な状態」が続いていたのか

スイスフランは「安全資産」

スイスフランは、世界的な不安が高まると買われやすい **「安全資産」**として知られている。

そのため、

  • ユーロ危機
  • 世界経済への不安

が強まると、スイスフランは急激に高くなりやすかった。


スイス国立銀行の対策

フラン高が進みすぎると、

  • 輸出企業が不利になる
  • 観光業が打撃を受ける

そこでSNBは2011年に次の政策を導入した。

「1ユーロ=1.20スイスフランを下回らせない」

フランが高くなりそうになると、

  • SNBがユーロを大量に買い
  • フラン高を強制的に抑える

この政策は約3年半続いた。


問題点:政策の維持が限界に近づいていた

この政策を続けるために、SNBは

  • 巨額のユーロ資産を保有
  • ユーロ安が進むほど損失リスクが拡大

という状態に陥っていた。

さらに、

  • 欧州中央銀行(ECB)が大規模金融緩和を行う見通し

が強まり、 フラン高圧力は今後さらに強くなると予想されていた


事件当日:すべてが一気に表面化

2015年1月15日

SNBは事前の予告なしに、

「為替上限を撤廃する」

と発表した。

市場では、

  • これまでフランは「無理やり安くされていた」
  • 本来の価値はもっと高い

という認識が一斉に広がり、 スイスフランが爆発的に買われた


結果:歴史的な急変動

  • 数分〜数十分で20〜30%のフラン高
  • 為替レートが飛び、取引不能な場面が発生
  • 市場の流動性が一時的に消失

これがスイスフランショックである。


なぜ日本の個人投資家が特に被害を受けたのか

① 日本は個人FX取引の規模が非常に大きかった

当時の日本は、世界最大級の個人FX市場。 欧米と比べ、個人投資家の参加比率が圧倒的に高かった。


② 高レバレッジ取引が一般的だった

日本の個人向けFXでは、最大25倍のレバレッジが可能だった。

この仕組みでは、

  • 相場が数%逆に動くだけで致命傷
  • 20%超の急変動は即破綻レベル

となる。


③ 「スイスフランは安全」という誤解

SNBが長期間「守る」と明言していたことで、

  • フランは急騰しない
  • リスクは低い

という認識が広く浸透していた。

結果として、リスクが過小評価されたポジションが積み上がっていた


④ 円高対策として利用されていた

当時は円高局面。 一部の日本の個人投資家は、

  • 円売り
  • スイスフラン売り

を組み合わせた取引を行っていた。

この場合、フラン高は二重の損失要因となった。


なぜストップロスが効かなかったのか

結論

注文は存在していたが、約定できる価格がなかった


① 価格が段階的に動かなかった

通常は価格が少しずつ動くが、当日は

  • 価格が一気に飛ぶ
  • ストップ価格を通過

という状態だった。


② 市場の流動性が消えた

  • 取引参加者が撤退
  • FX業者や銀行が価格提示を停止

ストップロスは最終的に成行注文になるが、 相手がいなければ成立しない


③ 約定は「最初に成立した価格」

市場が再開した時点での 最初に取引可能だった価格で約定したため、 想定より大幅に不利な決済が発生した。


結果と教訓

  • 多数の口座で証拠金を超える損失
  • 一部FX業者の経営破綻
  • 中央銀行の政策は絶対ではない
  • ストップロスは損失を保証する仕組みではない

スイスフランショックは、 **「想定外は必ず起こる」**という事実を市場に突きつけた出来事だった。