
2025年12月以降のメキシコペソ/円見通し──高金利時代の終わり方をどう見るか
なぜ今、メキシコペソ/円なのか
ここ数年、メキシコペソ/円(MXN/JPY)は「高金利通貨×超低金利の円」という組み合わせから、スワップ投資の代表格になってきました。
- コロナ直後は 1ペソ=4円台
- 2024年前半には一時 9円台半ば
- その後の調整を経て、2025年12月時点では 8円前後
という、かなり激しい値動きを経験しています。
この記事では、 「2025年12月以降、メキシコペソ/円をどう見ればいいのか」 という視点で、
- 金利差・金融政策
- 経済成長率・通商問題
- 原油価格・輸出構造
- 為替需給・投資マネーの動き
といった要因を整理しつつ、短期・中期・長期でのイメージをまとめます。
※将来の為替は誰にも正確には分からないため、「あり得そうなシナリオの整理」として読んでください。
カギ① 日墨の金利差と金融政策
ここ数年のペソ高・円安を一番説明してきたのは、言うまでもなく金利差です。
- メキシコ:インフレ対策で政策金利を二桁まで引き上げ
- 日本:長らくゼロ近辺の超低金利
この「大きすぎる金利差」が、 円を売ってペソを買うキャリートレードを加速させ、ペソ円の上昇を支えてきました。
ただし、2024〜2025年にかけて流れが変わり始めています。
- メキシコ:インフレ沈静化に伴い、利下げ局面へ
- 日本:マイナス金利解除・利上げ方向に舵、円安是正の色合いが強まる
つまり、 「金利差のピークは過ぎ、今後は少しずつ縮小していく」 という方向性が、かなりはっきりしてきています。
この先、メキシコが緩やかに利下げを続け、日本が少しずつ正常化していくなら、
- 「金利差だけで無理やりペソを買い上げる」局面は終わりつつある
- ペソ円の一方向のペソ高・円安トレンドは徐々に息切れしやすい
という構図になります。
カギ② 経済成長率と「米国リスク」
次に、両国とその背後にいる米国です。
メキシコ側
- 2024年以降、メキシコ経済は減速気味
- 米国の保護主義的な通商政策(関税強化など)の影響を強く受ける構造
- 2026年に予定されている USMCA(米墨加協定)の見直し が大きなイベント
ここでポイントなのは、
- 米国との関係が悪化 → 輸出・投資が落ち込む → ペソ安要因
- 協定が安定継続・ニアショアリング加速 → 輸出・投資拡大 → ペソを支える要因
という「二極化のシナリオ」が存在することです。
日本側
- 成長率は高くないものの、雇用はタイトで賃上げも進行
- 対外純資産が大きく、経常黒字構造は維持
日本は「低成長だが財政・外部バランスはまだ持ちこたえている」国で、 メキシコは「成長ポテンシャルは高いが、米国リスクを強く受ける」国、といった対比になります。
カギ③ 原油価格と輸出構造
メキシコは資源国としての顔も持ち、原油価格は今でもペソに一定の影響を与えます。
- 原油高:輸出・財政にプラス → ペソを支えやすい
- 原油安:輸出・財政にマイナス → ペソ安要因
とはいえ、最近は
- 自動車などの製造業輸出
- 米企業の「ニアショアリング」による工場誘致
といった要因も重要になっており、「原油だけ見ておけばOK」という時代ではない点も押さえておく必要があります。
カギ④ 為替需給と投資マネーの動き
メキシコペソ/円を動かしてきたのは、ファンダメンタルズだけではなく、投資マネーの需給です。
- 日本の個人投資家による「スワップ狙い」の円売り・ペソ買い
- 海外からメキシコへの直接投資(工場建設など)
- 米国からメキシコへの送金(レミッタンス)
これらが総合的に「ペソを支える外貨流入」になっていましたが、
- メキシコの利下げによる魅力低下
- 日本側金利の上昇で、「わざわざリスクを取ってまでペソ買いしなくても…」というムード
がじわじわ出てくると、ペソ買いの勢いは鈍る可能性があります。
一方でメキシコへの直接投資は構造的には続きやすく、 「長期資金は入るが、短期の投機マネーは気まぐれ」という構図もあり、 リスクオフ時には 円買い・ペソ売りが一気に進む ことも忘れてはいけません。
時間軸ごとのざっくりイメージ
数値はあくまで「レンジ感のイメージ」であって、将来のレートを確約するものではありません。
短期(今後数ヶ月)
依然として金利差は大きく、8円前後の高値圏での推移になりやすい
ただし、
- 日銀の追加利上げ観測
- 米国の関税・通商問題 などのイベント次第で、上下どちらかに**瞬間的なボラティリティ(乱高下)**が出るリスクあり
中期(半年〜1年)
- メキシコの利下げ継続、日本のゆるやかな金融正常化で、金利差は徐々に縮小
- 通商問題(USMCA見直しなど)の不透明感も重しになり、 ペソ高一辺倒ではなく、「ペソ戻り売り・円戻り買い」が出やすい地合い
- ざっくりイメージとしては、 **「7円台を中心とした広めのレンジ相場」**を想定しておく投資家が多い印象
長期(1年以上)
高金利是正と日本の金融正常化が一巡した後の「落ち着きどころ」は、
- ベースシナリオ:5〜7円台あたり
- 悪いシナリオ(世界的リスクオフや通商交渉の大崩れ):5円割れもあり得る
- 良いシナリオ(USMCA安定+ニアショアリング加速):7〜8円で底堅く推移
というように、シナリオごとのブレ幅が大きいステージに入ります。
用途別:どう考えればいいか
① 投資(スワップ・FX)
高金利メリットはまだ残るが、 **「金利差縮小フェーズに入っている」**ことを前提にする必要あり
レバレッジをかける場合、
- 「金利収入」より「為替の逆行」による損失の方が大きくなりうる
- 中長期での円高方向への揺り戻しも視野に、ポジションサイズとロスカット水準の管理が重要
② 旅行・留学・個人の実需
最近の 8円前後という水準は、直近数年で見ても「円安寄り」
長期的にはもう少し円高に振れる余地もあるため、
- すぐに決済が必要な分は仕方ないとしても、
- 先の出費分は、一度に両替しすぎない・複数回に分けるといった工夫も選択肢
③ 貿易・ビジネス
メキシコとの輸出入を行う企業にとっては、
- 2026年前後のUSMCA見直し
- 各国の金融政策の転換点 が、大きなボラティリティ要因になり得る
先物やオプションなどを使ったヘッジ戦略がほぼ必須の環境と言ってよく、
- 「金利差があるから当面ペソ高だろう」という前提だけで未ヘッジにするのは危険
まとめ:一方向トレンドから「シナリオ分岐」のフェーズへ
2020年以降のメキシコペソ/円は、
「超低金利の円」 vs 「超高金利のメキシコ」
というシンプルな構図で ペソ高・円安トレンドを走ってきました。
しかし 2025年12月以降を考えると、
- メキシコは利下げ方向
- 日本は利上げ・円安是正方向
- 米国の通商政策とUSMCA見直しが大きな不確定要因
- グローバルリスクオフ時には円買い・ペソ売りが一気に出やすい
という状況に変わりつつあり、 「高金利だから買っておけば安心」というフェーズは終盤戦に入っているように見えます。
今後は、
- 金利だけでなく、通商・政治・世界景気をセットでウォッチする
- 「強気シナリオ」「中立」「悲観シナリオ」といった複数のレートレンジを頭に置く
- 投資・ビジネス・旅行など、自分の目的に合わせてリスク許容度とヘッジ方法を決める
といった「シナリオ思考」がより重要になっていきそうです。