
インフレで株価はなぜ上がる?——“利益×倍率”でスッキリ理解
投稿日: 2025年11月12日
リード
物価が上がるインフレ期に「株高」が同時に語られるのはなぜか。 答えはシンプルで、株価=会社が稼ぐ力(EPS)× 市場の評価(PER)。 インフレはこの2つに同時に作用します。本稿は“最短距離”でその仕組みを整理します。
TL;DR(要点先取り)
- 株価はおおむね EPS(1株利益)× PER(倍率)。
- インフレは売上・利益を名目で押し上げやすい(EPS+)。
- ただし、金利上昇で割引率が上がり、PERは下がりやすい(PER-)。
- 適度なインフレ+価格転嫁力ありなら、EPS上振れがPER低下を上回り、株価が上がりやすい。
- 行き過ぎたインフレ/スタグフレーションでは逆風が強くなる。
基本の式:株価は「稼ぐ力 × 評価」
- 株価 ≒ EPS × PER
- 企業の利益(EPS)が伸びるか、市場の評価倍率(PER)が上がると株価は上がる。
インフレがもたらす“プラス”の力(EPSを押し上げる)
- 名目売上の増加 価格を引き上げやすく、数量が大きく落ちなければ利益が伸びやすい。
- 固定金利負債の実質目減り 将来返すお金の価値が薄まるため、財務が相対的に楽になる。
- 資産の再評価と資金シフト 在庫・不動産・資源など“モノ”の価値が上がりやすく、現金や固定利付債から株へ資金が流れやすい。
同時に働く“マイナス”の力(PERを押し下げる)
- 金利上昇 → 割引率上昇 物価を抑えるための利上げで、将来利益の現在価値が低く見積もられ、PERが下がりやすい。
- コスト先行の圧迫 原材料・賃金の上昇が価格転嫁より先行すると、利益率が悪化。
1分でわかるミニ例
- ある店が値上げにより**利益が+10%**になった(EPS+)。
- ただし金利上昇で**PERが-5%**になった。
- 株価は 1.10 × 0.95 = 1.045(約+4.5%)。 → 「EPSの伸び」vs「PER低下」の綱引きで決まる。
インフレ期に強弱が分かれやすい分野(一般論)
- 相対的に強め:エネルギー・素材、価格支配力のある必需品、インフレ連動の賃料を得る一部REIT、(局面次第で)利ざやが広がる金融。
- 相対的に弱め:遠い将来の成長に評価が偏る銘柄、価格転嫁力が弱くコスト上昇を吸収しにくい業種。
見極めチェックリスト(実務メモ)
- 価格転嫁力(ブランド力・独占度・必需度)
- コスト構造(原材料・賃金の感応度、契約の見直し頻度)
- 負債の質(固定/変動、満期分布)
- キャッシュフローの“期間”(将来利益の比重=デュレーション)
これらが強い企業ほど、適度なインフレ局面でEPSの伸びがPER低下を上回りやすい。
よくある勘違い
- 「インフレ=必ず株高」ではない 需要が弱いまま物価だけ上がるスタグフレーションでは、数量減+利上げのダブルパンチとなり、株式に逆風。
- 全業種が同じように動くわけでもない 価格転嫁力やコスト構造次第で“勝ち負け”がはっきり分かれる。
まとめ
- インフレは利益を名目で押し上げる一方、評価倍率を下げやすい。
- 適度なインフレ×価格転嫁力ありなら株価は上がりやすいが、過度なインフレや景気悪化を伴う場合は逆。
- 「EPS」と「PER」を分けて考えると、相場ニュースがぐっと理解しやすくなる。