
デジタル赤字が増えると円安になるのか?仕組みをやさしく整理してみた
デジタル赤字が増えると円安になるのか?
最近よく聞く「デジタル赤字」。 クラウド、サブスク、ネット広告、ゲーム課金…とにかく海外のデジタルサービスにお金を払う機会が増えています。
そこで気になるのが、
デジタル赤字が増えると、円安になるの?
という話です。
結論から言うと、
デジタル赤字が増えると「円安方向に働く要因」にはなるが、それだけで円安が決まるわけではない
という整理になります。
デジタル赤字とは何か?
まずは用語の整理です。
ここで言う「デジタル赤字」は、ざっくり次のような取引をまとめたものです。
- AWS・Azure・GCP などのクラウドサービス利用料
- Netflix や Spotify などの動画・音楽配信サービス
- スマホゲームの課金やサブスク
- Google / Meta などへのインターネット広告費
- SaaS(会計ソフト、CRM、グループウェアなど)の利用料 …など
これらの多くは海外企業への支払いです。
日本全体で見ると、
- 海外からデジタルサービスを「買う」支払い
- 海外にデジタルサービスを「売る」受け取り
の差し引きがマイナスになっていて、これをまとめて「デジタル赤字」と呼んでいます。
どうして円安方向の要因になるのか
メカニズムをシンプルに書くとこうなります。
- 日本の企業や個人が、円でクラウド・広告・サブスクを支払う
- そのお金は最終的に海外の IT・プラットフォーム企業に渡る
- 海外企業は受け取った「円」を自国通貨(多くはドルなど)に両替する
- その過程で、円売り・外貨買いの需要が発生する
為替の世界では、
- 円を売って外貨を買う取引が増える → 円安方向の圧力
となるので、デジタル赤字が増えるほど、理屈の上では円安に働く一つの要因になります。
ただし「デジタル赤字=円安」ではない理由
ここが誤解されやすいポイントです。 デジタル赤字は円安要因の一つではありますが、それだけで為替レートが決まるわけではありません。
1. 日本全体では、まだ経常収支は黒字
デジタル分野だけを見ると赤字ですが、日本の国際収支全体を見ると、依然として
- 貿易収支
- サービス収支(その一部にデジタル赤字)
- 第一次所得収支(海外投資からの利子・配当など)
のトータルは黒字になっています。
特に、海外への投資から得られる利子や配当などの「第一次所得収支」の黒字が非常に大きく、デジタル赤字を上回るプラス要因になっています。
2. 為替を一番動かしているのは金利と資本移動
実務的に、為替相場を大きく動かしているのは、
- 各国の政策金利・長期金利(とくに日米金利差)
- 金利の先行き見通し
- 世界的なリスクオン/リスクオフ(株安で円高になりやすい、など)
- 投資マネーの動き(日本から海外への投資、海外から日本への投資)
といった金融・投資の要因です。
ここ数年の円安も、
- 「超低金利の円を売って、高金利通貨を買う動き」が続いている
ことが主な背景であり、デジタル赤字はあくまでサブ要因の一つという位置づけになります。
3. デジタル赤字は「じわじわ効いてくる構造要因」
デジタルサービスは今後も拡大が続くと考えられています。
- 企業のクラウドシフト
- SaaS の普及
- 広告のデジタル化
- サブスク文化の定着
が進めば、日本から海外デジタル企業への支払いは構造的に増え続ける可能性が高いです。
その結果として、
短期的な為替は金利・景気・投機で大きく動く しかし、長期的には「外貨で稼いで外貨に払う」構造の変化が、じわじわ通貨の方向性に影響してくる
という見方ができます。 デジタル赤字は、こうした長期的な円安バイアスの一因と捉えるのが現実的です。