
コロナショック以降に見られた株式・債券の同時下落現象の背景と教訓
近年、従来の株式と債券の逆相関という常識に反し、両資産クラスが同時に下落する現象が観測されています。特に2020年のコロナショック以降、そして2022年における米国および世界市場では、伝統的な60/40ポートフォリオでさえ大幅な損失を計上するなど、金融市場における大きな転換期を迎えました。以下、その背景となる主要要因と今後の示唆について整理いたします。
1. 急激な金利政策の転換
コロナショック直後は各国中央銀行が大規模な金融緩和策を実施し、低金利環境が続きました。しかし、2021年後半から高騰するインフレ圧力を受け、米連邦準備制度(FRB)をはじめとする主要中央銀行は急速な利上げに転じました。急激な金利上昇は、債券価格を直接下落させると同時に、企業の資金調達コストや将来キャッシュフローの割引率の上昇を通じて株式市場にも悪影響を及ぼしました。
2. 高インフレの進行
サプライチェーンの寸断や需要急増、さらには地政学リスク(例:ウクライナ情勢)など複数の要因が重なり、2021年以降は世界的にインフレ率が急上昇しました。高インフレ環境下では、将来の固定収益の実質価値が低下するため、債券はもちろん、原材料や労務費の上昇による企業業績の悪化から株式も大きな打撃を受ける結果となりました。
3. 景気後退懸念と地政学リスク
急激な利上げと持続する高インフレにより、市場参加者は将来的な景気後退(リセッション)への懸念を強めました。さらに、ウクライナ戦争などの地政学リスクが、エネルギー・食料価格の急騰を引き起こし、全体的な市場の不透明感とリスクオフの流れを助長。こうした環境下では、通常なら債券に資金が流れるはずの場面でも、両資産が同時に売られる事態となりました。
4. 市場構造と投資家行動の変化
従来、低金利環境下では株式と債券の間に十分な分散効果が認められていました。しかし、2020年代は金利環境が大きく変動し、またインデックス運用やリスクパリティ戦略などの機械的な資産運用手法が普及した結果、特定のリスクが顕在化した際に株式・債券の両方が一斉に売られる現象が生じやすくなりました。これにより、伝統的な「株60:債40」の分散効果が十分に機能しなくなったと考えられます。
5. 今後の示唆
このような同時下落現象は、過去の低金利時代にはほとんど見られなかったため、現代の経済環境が従来の資産相関関係に大きな変化をもたらしたことを示しています。投資家にとっては、従来のポートフォリオ配分が必ずしも有効ではなく、柔軟なリスク管理と市場環境に応じた資産配分の見直しが求められる教訓となります。また、インフレが落ち着き金利が安定すれば、従来の逆相関関係が再び機能する可能性もあるものの、現状は各資産のリスク特性を正確に把握し、適切なリスクヘッジ戦略を講じることが不可欠です。



